トラウマを身体から癒す

「トラウマの癒しは、身体の内的な気付きを通じてたどり着くことが可能な自然のプロセスです」(ピーター・ラヴィーン, 1997)

 人は、顔・体つき、思考、そして行動も人によってそれぞれです。しかし、生理的な反応は人間(も動物も)誰もが同じです。呼吸、食事、睡眠などの生理的な反応は誰もが持っているものといえます。

 苦手な人がそばにいる時、「胸がザワザワしたり、ドキドキしたり」、「のどが固まってしまい、上手く言葉が出てこなかった」体験はありませんか?

 人は誰しも、感情に気付いて行動を起こす前に、必ず「身体的な反応(すなわち生理的な反応)」が起こっています。

 アメリカで医学生物物理学、そして心理学の博士号を持ちNASAのストレス・コンサルタントを務めたピーター・ラヴィーンは、トラウマ反応も同じく「生理的な反応」であると考えました。それは、トラウマによって苦しむ点は人によって内容も状況も異なるのに、「生理的な反応」はほぼ共通しているからです。トラウマを体験していると、今を十分に楽しめません。例えば、安心できる恋人と過ごしていても、自然と「心拍が高くなり」、「肩がこわばってきて」それが不安に変わってきたりします。

 そこでピーターは、トラウマ・ケアの方法を身体からのアプローチから見つけ出しました。「身体感覚を感じながら、生理的なトラウマ反応にアプローチしていく」それが、Somatic Experiencing®(以下、SE®)です。

 SE®は、従来の対話型のアプローチ(カウンセリング)とは異なり「今ここ」での安心感を身体で感じながら、少しづつ気になっている事柄にアプローチをしていきます。そのプロセスはとてもゆっくりとしたものですが、効果はとてもパワフルです。

SE®は生理的な反応にアプローチをしていきます。そのため、自然と神経系を整えていく作用があります